法定地上権とは?成立要件や共有名義の不動産を所有する場合について解説

共有持分売却窓口のお役立ちブログ

新井 一毅

筆者 新井 一毅

不動産キャリア22年

法定地上権とは?成立要件や共有名義の不動産を所有する場合について解説

共有名義の不動産を所有している方は、抵当権を設定する前に法定地上権について理解しておくことが大切です。
本記事では、法定地上権とはなにか、共有名義の不動産の場合、どのようなときに法定地上権が発生するのかについて解説します。
共有名義の不動産を所有している方は、ぜひ参考になさってください。

法定地上権とは?成立要件や共有名義への影響

法定地上権とは?成立要件や共有名義への影響

不動産に関連する権利は多岐にわたりますが、とくに重要なのが「所有権」と「借地権」です。
所有権は、土地や建物を自由に使用、収益化、処分できる権利で、登記を通じて公的に認められます。
対照的に、他人の土地を使用する権利は「借地権」と呼ばれ、主に「地上権」と「賃借権」の2つに分類されます。
法定地上権とは、同一名義の土地と建物が、抵当権の実行によって別々の持ち主になった場合に、建物の持ち主に自動的に設定される「地上権」のことです。
たとえば、土地に抵当権が設定され、抵当権の実行で競売にかけられた場合、土地の所有者と建物の所有者が異なる状況になります。
しかし、法定地上権を有していれば、建物の所有者はその土地を引き続き使用できます。

なぜ法定地上権が必要なのか

土地と建物が異なる持ち主になると、土地の新しい所有者は土地の使用権を持つため、建物の所有者が土地の使用権を失うリスクがあります。
しかし、法定地上権があると、建物の所有者も引き続きその場所を利用できるようになり、土地の使用権を失うリスクを防ぐことができます。

地上権・賃借権との違い

地上権とは、他人の土地を使用する物権的な権利で、土地所有者の許可なく土地を利用し、うえに建物を建設したり、その建物を担保に設定したりなどの行為が可能です。
地上権は、持続的かつ独立した権利として認められています。
一方、賃借権とは、土地の使用許可を土地所有者から得る必要があり、建物の建て替えや売却をおこなう場合も所有者の同意が必須です。
賃借権は債権的な性質を持ち、契約に基づく相対的な権利に留まります。
どちらの権利も、建物所有を目的とする場合、借地借家法の適用を受け、借主の権利が保護されることになります。
また、建て替えやその他の条件は、双方の合意により契約で定められる決まりです。
つまり、地上権は物権として、賃借権は債権として機能します。
どちらの権利を選択するかは、土地の所有者と借りる方との合意によって決定されます。
一方、法定地上権は、契約によらずに、競売によって建物と土地の所有者が別々になった際に発生する権利です。

成立条件

法定地上権は、以下の4つの条件を満たす必要があります。
①抵当権設定時に土地上に建物が存在すること
法定地上権は、抵当権が設定されたときに、該当する土地のうえに建物が存在している必要があります。
抵当権の設定後に建物が建てられた場合、法定地上権は成立せず、土地が他者に移った際には建物が撤去される可能性があるため、注意が必要です。
②抵当権設定時に土地と建物の所有者が同一である
法定地上権は、抵当権が設定されるときに、土地と建物が同一の所有者である必要があります。
所有者が最初から異なる場合は、抵当権と併せて地上権や賃借権が設定されているため、法定地上権は不要となります。

③抵当権が設定されている
抵当権の実行による競売や強制処分がおこなわれた際に、法定地上権が発生します。
④競売によって土地と建物の所有者が別々になること
競売によって、土地・建物の所有者が違う場合に限り、法定地上権が発生します。

建物共有の場合に土地に抵当権が設定・実行されたらどうなる?

建物共有の場合に土地に抵当権が設定・実行されたらどうなる?

建物共有の場合には、土地に抵当権が設定され、その抵当権が実行された際の法定地上権の問題を解説します。

法定地上権は成立する?

もともと土地と建物が同一の所有者に属していなかった場合、法定地上権が成立するかどうかが気になる方もいらっしゃるでしょう。
たとえば、A氏が所有する土地に、A氏とB氏の共有名義の建物が建っている場合、土地と建物が同一所有者に帰属していたとはいえません。
A氏は自己の意思のみで土地に抵当権を設定できますが、抵当権の実行により共有者B氏に不利益が生じる可能性があります。
したがって、このケースでは法定地上権が成立します。
土地はA氏が単独で所有していますが、建物はA氏とB氏で共有されているため、法の観点から、抵当権が実行された場合でも建物の共有者B氏も保護されなくてはなりません。

法定地上権を準共有する

上述の事例は、法定地上権の成立が共有者の権利保護にどのように寄与するかを示しており、不動産共有における権利関係の理解を深めるうえで重要なケースです。
たとえば、A氏が建物の共有者であり、法定地上権が成立せずに約定利用権(賃借権など)に変わってしまうと、抵当権が実行された後の土地の利用権はどうなるのでしょうか。
その場合、建物共有者B氏の約定利用権と新たな土地所有者C氏との対抗関係によって決まることになり、A氏に不利益をもたらす可能性があります。
また、共有者B氏にとっては、法定地上権が成立することが建物を引き続き所有するうえで有利です。
競落人C氏は、抵当権の実行後に建物が残ることを承知のうえで入札しているため、法定地上権の成立が認められてもとくに不利益はありません。
したがって、A氏とB氏はこの法定地上権を共に享有することになります。
なお、法定地上権は所有権ではないため「準共有」とされます。
「準共有」とは、所有権以外の権利を共有する際に使われる言葉です。
最高裁の判例でも、一人の建物共有者がその建物の敷地を単独で所有している場合、その方は他の共有者のためにも土地の利用を認めていると見なされるとあります。
建物が共有名義であり、建物の共有持分に抵当権が設定されて実行される場合も同様です。

土地・建物双方が共有名義の場合はどうなる?

土地・建物双方が共有名義の場合はどうなる?

土地・建物双方が共有されている状況で、一方の共有者の土地または建物の持分に抵当権が設定され、実行された場合はどうなるのでしょうか。

判例

例として、土地とその上の建物が共有者A氏とB氏の両名に属しており、A氏の持分の土地が差し押さえられ、その結果として第三者がその持分を取得した場合を考えます。
このケースでは、最高裁の判例によれば、法定地上権は認められないとされています。
判決の理由は、もしA氏のために法定地上権が成立すると、B氏はA氏の事情のみによって土地に対する使用収益権が影響を受けることになり、不公平になるからです。
また、地上権がなくても、直ちに建物を撤去する必要があるわけではなく、建物の所有者が経済的な損失を受けることもないため、法の趣旨に反することはありません。
地上権は、土地共有者の持分上では存続することができません。
土地共有者全員の同意がない限り(この事例ではA氏とB氏両者の同意がない場合)、法定地上権が成立することは不適切とされています。
つまり、土地と建物が共有の場合、一方の共有者だけの事情で法定地上権が成立すると、他の共有者に不利益をもたらすため、その成立を否定する判断がなされています。

土地が共有の場合も同様

土地が共有名義の場合、その共有持分に抵当権が実行された場合も、法定地上権は発生しません。
抵当権が実行されることで、法定地上権が成立すると共有者Bが不利益を受ける可能性があります。
共有者B氏からすると、A氏の個別の行動によって、法定地上権が勝手に成立することは不公平です。

また、土地がA氏とB氏の共有名義であり、建物に抵当権が設定・実行された場合でも同様の判断が適用されます。

まとめ

法定地上権は、同一の所有者が有する土地・建物に抵当権が設定され、競売によって土地・建物の所有者が違う場合に、建物の所有者に与えられる土地を使用する権利のことです。
法定地上権は、建物共有の場合で土地の抵当権が実行されたときに発生します。
しかし、土地・建物双方が共有の場合は、法定地上権は成立しません。


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